夏の観望会 冥王星は見えたか?! 
 
 恒例の夏の観望会レポートです。例年はペルセの時期になるのですが,12〜13日は月が○。そんな理由で今回は月のない7月末を選んで実施となりました。
 ところが決まったのが寸前だったためでしょうか,メールで案内しましたが欠席連絡がけっこうありました。まあ,参加人数に関係なく,自由に開かれるのが当会の観望会でもあるのですが。

 というわけで,梅雨も明けた後のスーパー猛暑の29日,午後8時からヒルトップ天文台前の広場で開催となりました。
 ヒルトップ前広場での観望会というのも,ちょっと珍しいのですが,この夜は市内某公立高校地学部の合宿と重なっていることもあり,天文台が夜間利用可能になっていたからなのです。ついでに天文台の望遠鏡も利用させていただこうと・・・。
 ところが到着してみると雲がびっしり。昼間はスーパー青空だったのが正反対。どうも前線が近づいてきてるということ。それでもときおり晴れ間が広がって,天の川も見えてきたりしていたので,とりあえず望遠鏡をセット。
 期待の天体めぐりはイマイチだったので,そんなときは望遠鏡たちの紹介です。今回はヒルトップ天文台の望遠鏡たちを順番に登場してもらいましょう。
 ヒルトップハウスに入って正面にある望遠鏡展示室。この夜は,下の写真のように3台の望遠鏡が,まるで夏ばてをしているかのように寝っ転がっておりました。
  
 
   
 上中の写真は,ヒルトップハウス天文台のメインスコープ。口径50cmの反射望遠鏡です。かの有名なジンデン氏作の鏡が使用されています。ニュートン式とカセグレン式の二つのタイプに切れ替えて使用でき,この夜は,珍しくニュートン式にて,倍率50倍という日頃はあまり使われない低倍率で,M8を見ることができました。 
 ヒルトップ天文台内の移動可能な望遠鏡の中で,唯一の屈折望遠鏡。(もう一台ありますが,50cmのメインスコープに同架されています。)口径が12.5cmのフローライト鏡筒です。口径の割に大きく重い印象がありますが,蛍石アポクロマート,非常にシャープな見え味で,気流の安定しない夜では一番の見え味を誇ります。惑星限定と考えると,ときにはメインスコープを凌ぐこともあります。
 最近はコーティングに焼けが生じてきていて,一度メンテナンスの必要があるかもしれません。
 この夜は,まず最初に
鳴門の花火に,その先が向けられました。それから後は,木星やM22へ。木星はやはり今宵一番の安定度とコントラストでした。  
 
 続いて,MT160。16cmの反射望遠鏡です。この筒は16cmの割に思ったよりも軽量。非常にオーソドックス。オールマイティに使用できるスタンダードな望遠鏡です。星像もシャープで集光力もあり,見る天体をあまり選びません。機種選定に迷ったときには,この鏡筒です。今宵この望遠鏡で覗いたのは,M6,M8,,,ぐらいかな?まあそれほど空の状態が良くなかったのです。この望遠鏡も埃がついていたり,カビの気配もあったりでメンテナンスの必要な時期にきているのではないでしょうか。 
 
 
 
では,続いて今回の個人持ち込み望遠鏡となりますが,今までに幾度となく紹介してきているので,画像だけ。。。 
 この2台の望遠鏡では,木星,M11,M13,M17,M57,M22他を見ることができました。

 そしてそして,この夜の
スーパーサプライズが起こります。
 右の望遠鏡で天体めぐりをしていたごんぞーさんが,『こんなもの入っているんですが,わかります?』と一言。即,覗かせてもらいましたが,暗めの星がたくさん見えているだけで,特にメシエ天体でもなく,何だろう?と不思議に思っていると,手にしたコントローラーを見せてくれました。
 その表示部に映し出されていたのは
”Pluto”の文字。
 『えっ!?』
 言葉につまりました。
 『どれかがそうと思うんですが・・・・・。』と,ごんぞーさん。
 確かにそうなんでしょうけど,確かにわかりません。無理だろうと思いつつ,視野に見えている特徴的な☆の並びを覚えて,天文年鑑の冥王星のページとにらめっこ。”ハ”の形が傾いたのが,あっちとこっちに2個あって,,,。年鑑の星図と比べて見ますが,あまりにも縮小星図なのでわかりにくい。それでも何度か同じことを繰り返していると,視野のちょっと北に,へび座のξ星があることがわかり,望遠鏡を少し動かしてもらいました。すると特徴的な2個の星の並びがわかり,何となく冥王星に近づけそうな気がしてきたのです。そこにosakaさんの相方,Thinkpad登場。得意のUNIX上で動く星図ソフトで,ξ星からの並びを確認。この時点でもう冥王星をつかめると確信できました。
 そして視野を何度か眺めて,
『これっ!』。ついに,冥王星発見!
 雲に遮られつつも,合間の晴れ間にみんなで確認。『冥王星が見えてますよ〜』って,高校生たちにも先生たちにも。。。
 これで『(9つの惑星全部)完全制覇ですね。』と,なかなかの満足感。雲が多くテンションが上がらないままの観望会が,いきなり輝きを感じさせるものになりました。
 大型望遠鏡の自動導入・天文年鑑・PCでの星図操作,連携プレーの勝利!
・・・・だったはずでした。 
 
上の図は,そのときの30cm76倍ほどで見ていた視野のイメージ。視野の広さは8度強。天頂プリズムを使っているので鏡映像になっています。この図は,ステラナビゲーターで確認したときの図です。実はどうも,この12.05等の恒星を冥王星だと思っていたらしいことが星図ソフトからわかりました。The Skyでも確認して,同じ位置だったので間違いはないでしょう。
 
※これは帰宅してから,確認してみようとしてわかったことです。
 では,どうして見間違えたのか?上図を見て下さい。観望会では,星の並びの特徴から,10.3等の恒星と8.7等の恒星を結んで,2倍延長した位置に冥王星があると確かめたのですが,上図のように表示を大きくして詳細を見ていくと,2倍延長したちょうどその場所には12.05等の星があり,冥王星は延長方向に3倍の位置だとわかってくるのです。ところが,ステラナビゲーターでもそうなのですが,表示を小さくしていると,星同士の間隔が縮まって,2倍の位置に冥王星が見えてしまうのです。そしてPCの星図には,その12.05等の星がなかった。
 天文年鑑の図を見たときに,冥王星と重なるように記されていた恒星が気にはなっていたのですが。
 でも,仮りに位置が正確にわかったとしても,もしかしてあの星空の条件ではわからなかったかもしれません。というのも,冥王星と見間違えた12.05等の星の見え方は,かなり弱々しかったのですが,それよりもまだ2等ほど冥王星は暗いのです。その冥王星が昨夜の空の状態の下で見えたかどうか,ちょっと自信ありません。冥王星,恐るべし。。。やっぱり難敵です。ともあれ,次にもう一度,空の条件の良い場所で挑戦したい気持ちになりました。 
 冥王星だと信じて覗いてくれた皆さん,申し訳ございません。訂正いたします。次こそは,再度の連携プレーで探し出しましょうね。

 この夜の参加者は,odaさん,ごんぞーさん,osakaさん,Mo先生(地学部の先生ですが,会員さんです),ピッコロの5名でした。
 
 
戻る