阿南市科学センターでの天体観望会
2024.03.09



 ずっと以前から話題に上っていた阿南市科学センターでの観望会。本当に何度も口にされながら実現されていませんでした。
 それが,しばらく前にIMAKOさんが声かけをしてくれていたところに,今回,Kumaさんが言い出しっぺとなって,計画スタートの合図を切ってくれたんです。
 阿南市科学センター天文館のメイン望遠鏡は,個人的には覗いたことはありますが,当会が団体として利用させていただくのは初めて。
 さて,どのような観望会になるか,期待は高まります。

 気になる天候はというと,数日前から(夜は)快晴の予報。ところが当日は朝から雨,曇り,晴れ間ありの繰り返し。リポーターは所用で阿南にいたのですが,4割雨で残り4割が曇り,残り2割が晴れ間と,そんな感じ。午後から夜の天候は大丈夫かなと気になりつつも,天気予報は遅くなるほど晴れ間が広がるとのこと。それを信じるしかありません。
 途中,那賀川町にいたMinamiさんから,『ベタ曇りだけど,今夜開催するの?』と連絡が入ります。そのときは既に,『今夜は開催』という案内を出したばかり。う〜ん,いろいろと心配ですが,やっぱり予報を信じるしかありません。

 集合は,19時45分。ボチボチと参加者が集まってきました。
 
 

 集合場所のホールには,望遠鏡が何台か展示されています。 
 
 

 参加予定は13名。※正確には予定外の方が,実は会員さんだったため14名。欠席が出て最終13名。(外部参加者数のみ)
 13÷112=約12 数字の上での当会会員数は112名とすると,全会員の1割以上が参加という,これは記録的な数字です。素晴らしすぎ!何がスゴイって,これだけの参加者を募ることができたイベントは過去にありません。
 これも113cm望遠鏡のパワーなのでしょうか。
 
 とりあえず初めてこの望遠鏡を見た会員さんもいることもあり,科学センターのメイン望遠鏡の紹介を簡単に紹介しておきます。
  反射式望遠鏡(カセグレンタイプ)・・・鏡を使った望遠鏡
  口径(望遠鏡に使われている鏡の直径)113cm・・・四国最大
  焦点距離・・・1100cm,口径比9.7
  集光力は,肉眼のおよそ26,000倍

 観望会開始の20時,ドーム内への案内がありました。
 着席して,IMAKOさんからの説明を聞きます。地元の高等専門学校の学生さんや先生,一般の来館者もこのときは一緒です。
  
 さて,いよいよ観望会スタートなんですが,空は雲が広がるばかり。
 まずは沈む前の木星にと思いきや,その木星は雲の中。
 そういうわけで,雲のないところを探しながら,大型望遠鏡は向けられことになります。
 観望開始後,探し求めていたわずかな晴れ間に見えたのは北斗七星。柄の部分が見えていたので,
M51へ。
 覗いてみると,子持ちの子どもの方が非常に見えにくい。腕は見えない。
 本体の方は芯のあるしっかりとした像なんですが,伴星雲の方がとても淡い。見える気がするという人もいれば,全然見えないという人も。まあ,それだけ残念な天候とシーイングだったということです。
 そして,北斗七星の近くにある天体から
M106がターゲットに選ばれました。M106は,りょうけん座にある9等の渦巻き銀河。メジャーなM51でさえこの見えですから,期待しないまま覗いてみると,やっぱり想定通りのイメージ。かすかな楕円状の非常に淡い煙。裏切られなくて良かったかな。
 
 流れゆく雲を避け,晴れ間を求めながら次に導入されたのは,ぎょしゃ座の
散開星団M36 
 散開星団の多くは,大型サイズの天体である場合が多く,どちらかというと小型の望遠鏡を使って,広い視野で見ることができる低倍率で観察するのがほとんど。まさか,1m超の望遠鏡,それも275倍という倍率で見るとは思いもしませんでした。
 見え方はというと,さすがに良く見えます。ところが中心部の強拡大。細かく暗い星々はたくさん見えていますが,全体像はわかりにくい。まあ,それは当然のことですね。

  

 続いて鏡筒が向けられたのは北東方向。北斗七星の北方向に雲が少ない状況でした。
 ここで,275倍にて観察したのは,
M81M82の系外星雲。薄い雲越しの観察で,M81は中心部が明るく芯をもった感じに見えますが,渦巻きの腕はわかりません。一方,不規則銀河であるM82の方は,凸凹感がバッチリです。何よりも大きく見える!この口径でこの高倍率でM82を見る機会は,そう多くないと感じました。とても貴重な経験。
 ここで,壁の片隅でごそごそと天体カタログをめくるOsakaさんの姿発見。そして,10等級の
NGC1023なる天体をリクエストしてくれました。
 リポーターには,どんな天体なのかさっぱりわかりません。たぶん銀河には違いない,でも,何座にあるのかもわかりません。
 説明をお聞きすると,ペルセウス座にあるレンズ状銀河とのこと。調べて見ると,8分×3分と,それほど大きくはない天体です。スマホから,画像を見せてくれましたが,ほぼそれとわかるようなイメージで観察することができました。こんなマイナーな銀河は大型望遠鏡で見るのが王道なんですね。
 続いて,
M76が導入されました。小あれい状星雲と言われてるみたいです。M76はペルセウス座にある惑星状星雲。大きさは2分×1分。小さいです。こういう天体も大口径での観察に向く天体。高倍率も生きてきます。


 ドーム内には大きなモニターとパソコンが設置されていて,SKY6というソフトで望遠鏡の動きを制御,自動導入しています。
 この画面を見ると,望遠鏡で見ることができる観望可能な範囲がわかります。木星は既に観察範囲外にあります。このモニターを見ながら,観察可能な範囲で,なおかつ雲のない天体を探すしかありません。そんな理由から(ドームスリットの隙間から)上を見たり,(パソコンモニターの)下を見たりと首の上下運動。そうしていると,
天王星がまだ見えてるのを発見。スリットから外を見ると薄雲しかありません。
 さっそく113cmを向けていただきました。
 この透明度の低さと気流の悪さ,そして雲。この状況下では星雲星団よりも天王星かも!倍率も275倍ですから,ちょっと期待してしまいました。
 
 
 275倍で見る天王星は,しっかりと円盤状に見えてます。リポーターも所有の13cm屈折の300倍で観察した経験がありますが,113cmでは明るさがまるで違います。光量があり過ぎなのでしょうか,青っぽさは見られず白っぽい。いや,これも天候のせい?IMAKOさんからは,高度が低いので,天王星の周囲に赤や青の色が付いて見えるかもと説明がありました。今まで何度も見てきた天王星ですが,色はわかりにくいものの明るさは驚異的で,迫力さえ感じられました。

 それからまた,晴れ間探しが続きます。
 天王星に続いて導入していただけたのが,
NGC3242。またもリポーターにとっては聞いたことのない天体。これも遠い銀河かと思っていたら,うみへび座にある木星状星雲とのこと。名称からは,木星に似ているから名付けられたと思われますが,覗いてみると青みが非常に強い天体。濃淡のムラムラがあって,惑星の模様に見えないことはない気もします。でも木星とは全然違いますね。
 
 気がつくと,リオン座付近の雲が少なくなってきていました。それまでは,『オリオン座付近が見えたら,おもしろい天体がたくさんあるのに。』とあちこちで話されていたようです。三つ星もハッキリと見えてきました。チャンスです。まずは,
M42→トラペジウム。残念なシーイングの下であっても,M42の細やかな糸状の構造がよくわかります。中心に見えるトラペジウムも明瞭。ガスの色合はわかりませんが,これも迫力のあるイメージです。
 そろそろ観望会終了時刻が目前に迫ってました。時間的には最後の観望天体になるでしょうか。鏡筒は
M1に向けられました。
 ところが,こちらはあまりにも見え味悪し。見る人によっては恒星しか見えないという人も。同架されている25cm屈折の方が,まだハッキリと見えています。こちらの倍率は60倍ほど。拡大されてないだけ,集光感があるのでしょうか。何度も繰り返して覗いている方もいましたが,首を傾けている様子を見ると,良い見え方ではなかったのかな。
 
 では,これにて観望会終了かとなりかけていたそのとき,IMAKOさんから『あと一つだけ案内させてください。』と,
シリウスBが導入されました。
 シリウスBの解説をしていただいた後,IMAKOさんは観察をより確かにするために,シリウス本星との位置関係を十字線を目印に図示してくれました。こういうのがあるのとないのとでは,わかりづらい天体を見る場合,大きな違いが生じます。皆さんも集まって来て,各自確認していました。
  
 
 そんな丁寧なガイドをサービスしてくれても,実際は本当にわかりづらい。113cmを持ってしても気流が安定しない状況の中,確認は非常に困難な対象。私も数回覗いてみましたが,捉えることができませんでした。そんな今夜のシリウスBに関して,(リポーターの感じですが)見えた人が1名,見えた気がした人が数名,見えなかった人も数名。そんな感じでした。やっぱり難物中の難物ですね。
 それでもその見えるか見えないかに意識集中している姿が多数。参加者の皆さん,気持ちが思いっきりシリウスBに向くことになっていたようです。ある意味,とても盛り上がった時間であったのではと感じました。観望会最後に,良いターゲットを提供いただけました。
 そして観望後,全員に立派な『シリウスBチャレンジ参加賞』を配布していただきました。うれしいおみやげですね。

 

 今回は,天候,気流,透明度と観望条件に関しては,期待から大きく外れてしまった観望会ですが,その状況の中でも,けっこうたくさんの天体を見ることができたのではと思います。113cmという立派過ぎる口径の望遠鏡ですが,大口径ゆえ,その持てる力を100%発揮できる夜は,仮に快晴の下であっても,年間では相当に限られた日数であること。そういう最良のイメージに巡り会うことは,非常に希有なことだと考えます。ですから,思い通りに見えなかったことを嘆くよりも,そんな悪条件下でも見ることができた内容に目を向けたいと,個人的には考えます。普段見ることのできない天体のイメージに,刺激と感動をもらえたと思います。
 帰り,駐車場まで歩く途中,『楽しかったです』との声をたくさん聞くことができました。リポーターも,良い経験になったなあと振り返りながら帰路につきました。

 参加者の希望に細かく耳を傾けてくれながら案内をしてくださったIMAKOさん,ドーム内の片隅で天体カタログをチェックして,今見えている天体を調べてくれていたOsakaさん,とりまとめ役として,進行まできちんと引き受けてくれたKumaさん,いろいろとありがとうございました。
 また,科学センターでのイベント等でご一緒する機会があれば,良い交流の機会にしたいと考えます。今後ともよろしくお願いします。
 参加者の皆さんには,寒い中お疲れさまでした。
 
 ※今回の観望会の参加者は,<順不同>IMAKOさん,Kumaさん,星羊翁さん,モレキュールさん,Osakaさん,ヨネさん,Fukudaさん,Minamiさん,Yachinさん,ゆうきさん,ブルーさん,ハッチさん,るなさん,ピッコロの14名でした。
  



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