7月22日 いよいよ本番
 出発間近。
 ホテルのフロントさんから,観測場所として,西湖の近くに小高い山があり,湖のほとりほど人は来ないんじゃないかとの話を聞くことができました。
 場所は,西湖の北西にある,標高125mの宝石山という所です。左の写真は,(翌日)西湖の正反対側から撮影したものですが,中央右よりの山頂に塔が写っていますが,そこです。
 昨日,紹介してもらった学校は,早い時間帯で,学生さんはまだ登校していないであろうこと,やはり不法侵入であるかもしれないことなどから,やっぱりやめようということになりました。

 ホテルからは,タクシーで山の麓まで。初乗り11元,約160円ほど。
 そこからは,歩きです。
 この時点で頭の中は,日食のことよりも背中が重いことの方が主役になっていたような。。。
 ほとんどこの旅行に持ってきた全てをかついでの山登り。重量は10kg。日頃,鍛えていないものだから,いつ行き倒れてもおかしくない状況。
 階段は続きます。気持ちは二宮金次郎さん。歩きながら地面しか見ていません。
 汗をかくこと2リットル。まあ,そんな感じです。
 前を行く二人は,マラソンに山登りにと鍛えている二人。さすがに元気です。私は,体力不足を嘆きたい気分。
 でも,おいてけぼりをくらったら,周りは中国の方ばかりなので超心配。ついていくしかありません。
 根性!
 気合だぁ〜。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ホント 気合です。

 この登山で,3日間のエネルギーの75%を使い切ってしまいました。
 そして,苦節十年,やっと到着。
 
観測場所はこんな所  昨日,歩いた「白堤」の道ががとても小さく見えています。
  一番上の写真に小さく見える塔が,この上の段の中・右写真の塔です。明の時代のもののようです。
  私たちは,この小高い山の上の一角に陣取りました。yamaさんたちが,植物の群集の手前を選択してるので,自分たちの前に誰も来ることはありません。多少窮屈な感じはしますが,なるほど理にかなってます。
 到着時,人はまだそれほど多くはありません。
  時計を見るともう欠け始めの時刻がせまってきています。速攻で組み立て開始です。
 日食開始まであと少し。
 気持ちは,かなりあせってます。
 暑くて,ビデオカメラもタオルをかぶっています。
 私はメガネのレンズに汗がボトボト。
 さて,これから佳境というところですが
 いきなりですがここで,重大発表!
 せっかく作った,余分も含めて4つも作った遮光フィルターがありません。
 10枚くらい作って,一番しわの少ないのを4枚持ってきたんです。
 着替えのシャツの中に入れてきたので,チェンジする際に,そのままホテルに忘れてきたのでしょう。


 ぎゃぁ〜。

 どうしよう。

 困った。

 ひょえ〜。
 部分日食のうちは遮光フィルターは必須です。
 部分日食のうちに,太陽のずれを確認しながら極軸の確定とピント合わせをする予定でした。
 それができない!
 頭の中にピヨピヨ言いながら飛んでいる鳥がいます。。。

 とにかく,方角については,osakaさんからコンパスを貸してもらっておおよそですが決定。高度については,念のためにもってきていた分度器をセロテープで貼り付けて北緯30度に雰囲気で合わせました。
 極軸については,これで何とかなるでしょう。
 だけどピントは?
 どうしても太陽(無限遠)でピントを合わせる必要があります。フィルターがいります。う〜ん。。。
 
 さて,フィルターの代わりですが,雑誌の付録の日食メガネをテープで貼り付け,残りの部分に手製の日食メガネを貼り付けてみました。この状態で望遠鏡を覗いてみても太陽はほとんど見えません。
 どうして?
 口径何cm分になるんでしょう?それに太陽は雲越しの状態。
 仕方ないので,
この2枚の間を数ミリ開けてみました。
良い子のみんなは,絶対にマネをしてはいけません。

 とたんに太陽が
ピッカー!!! くっきり。
 まぶしすぎ。こわいよ〜。
 ほんの数ミリですが,望遠鏡で直接太陽を見てる状態。
 これ以上,開けすぎると眼がピンチ。
 いや,もうピンチ?
 まぶしすぎはしない? いや何とか,自問自答が続きます。
 まさにアクロバットですね。
 やっぱりこわいけど,この太陽でピント合わさなきゃ。
 このドキドキ感がけっこういけます。
 osakaさんは,デジタルビデオをセッティング。yamaさんも少々離れた場所にセット完了。二人は余裕で予定の行動をとっているのに,私一人予定外の行動をとらざるを得ない状況に四苦八苦。


 暑いのになおさら,汗汗汗。
 現地時刻で,午前9時5分。皆既まであと半時間ほどの頃の太陽です。
 この頃はまだ厚めの雲に隠れたり,現れたり。
 この画像は,雑誌付録の日食メガネ+自作日食メガネと数ミリの隙間ありの状態で撮影しています。雲が厚くなってきたときがチャンスとばかりにシャッターを押しています。
 カメラを向ける人の数も増えてきました。
 部分日食が進むにつれて,人が多くなってきました。
 そうそう,初めの予定地であった西湖湖畔ですが,来る途中の車の中から見た限りでは,すさまじい人の群れで,とても望遠鏡をセットできる状況ではありませんでした。西湖西側半周,一体何人の人が集まったのでしょうね。

 yamaさんは,機材のすごさからでしょうか,テレビ局のカメラが頻繁に向けられていました。取材もされていたようですが,中国語・・・・・。yamaさんがんばれぇ〜。
 右隣のosakaさんもテレビカメラの人気者。理由は,osakaさんが作成した杭州版日食進行時刻表。これは万国共通の数字ですから,一目でわかります。何度もカメラが向けられていました。
 そのosakaさん,余裕の撮影だったはずですが,実は子どもに三脚を蹴られて太陽像が逃げてしまい,元に戻すのに苦労していたそうです。
 私といえば,左隣の中国の方とのコミュニケーション。でも「◎◆□※@&∀」。
 彼は,Nikonの一眼デジカメにレントゲンフィルムを手に持って撮影中。いろいろと話かけてくれるのですが,全部「◎◆□※@&∀・・・」。まったく返答のしようがありません。ごめんなさい。
 まあ,途中で「ジャポン?」という言葉が聞き取れたので,「はい。」と返事したらニコニコと,カメラを向けてくれました。
 本当はもっとゆったりと,日中友好できれば良かったのですが。。。
いよいよ皆既
   osakaさんが皆既までの時間を伝えてくれます。
 部分食が70%を超えた頃でしょうか。気持ちひんやりとしたた感じがしてきました。
 じわじわと気分が昂揚してきているのがわかります。

 90%超えくらいから,なんとなく暗くなったような気がしてきました。
 いよいよ皆既が近づいてきます。
 細く消えゆく太陽の光。
 いよいよです。
 その瞬間がやってきました。

 
 途中で,同じ方向を撮影してみました。
 左が部分食のとき,
右が皆既食のとき。
 これだけ違います。


 「わーっ。」
 「
おっー。」と,あちこちから発せられる叫びに似た声が周囲に響きます。
 なんだかんだ聞こえてきますが,みんな中国語。
 このあたりの雰囲気は,osakaさんがアップしてくれている動画をご覧ください。

 そして,皆既。
 第二接触のダイヤモンドリングはわかりませんでした。
 太陽の端っこが見えなくなった後,コロナがパッと見え始めました。
 夜です。
 昼間に闇が出現。
 雰囲気に飲まれているので,じわじわと夜が来たのか,いきなり夜になったのか定かではありません。

 たぶんすごく興奮してるのでしょう。肉眼で見たり,カメラのモニターを見たり,落ち着きません。露出?絞り?ズーム?全て,どこかに行ってしまった感じです。

 こんなとき皆既の時間が長めというのは良いですね。少し我を取り戻す時間が生じます。そうです,今はフィルターはいらないのだ。ピントの確認や露出の変更をするゆとりが少しだけ出てきました。

 皆既中は,こんな感じ。
 肉眼で見たイメージにと思いましたが,少し望遠になってます。


 わずか,5分強の皆既。これでもかなり長時間な方ですが。感覚的にはあっという間。
 そうです,この5分のために,はるばる日本からやってきたんです。
 それだけ超次元の,スーパー非日常な5分間だったんです。
 私は,アクシデントのおかげで,落ち着いてじっくりと皆既を楽しむ部分はあまりなかったような気がします。皆既だけは絶対に失敗のないようにと,デジカメのシャッターをていねいに押すのが精一杯だったかもしれません。それでも,本当に雰囲気に飲まれてしまっていたので,ダイヤモンドリングのベストタイミングには,少し出遅れてしまい,けっこう巨大なダイヤになってしまいました。

 第三接触が過ぎ,まぶしい太陽が顔を見せてきました。
 ほんの少しの光でも,一瞬で昼間に戻ります。太陽の光って偉大なんですね。

 後でosakaさんから聞いたことですが,皆既前後で鳴いていたセミが,皆既中はぴったりと鳴きやんでいたとのことです。
 落ち着いて,あれこれ観察してるところがスゴイ。
 
 さて,太陽はまだまだ大きく欠けた状態なのに,気分的には”日食終わり!”です。これから後,本当に余裕で部分日食・太陽の復活を観察することができました。
 左画像は,皆既が終わって20分後頃の太陽。落ち着いてしっかりと撮影できました。フィルターはごじゃですけど。
 yamaさんは,最後まで(太陽が○に戻るまで)撮影を続けていました。その「徹する」気持ちが素晴らしいです! 
 皆既日食杭州ツアー参加者全員(といっても4人だけど)で記念撮影。
 疲労感が漂っていますが,気持ちはみんな大満足してるんですよ。
 天上にも宝石,ここはまさしく名の通りの宝石山でしたね。
 本当に良い体験ができました。
 数々の幸運に謝謝。
 

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